月経前症候群
月経前症候群
月経前症候群(PMS)は生理の1週間ほど前から、下腹部や乳房の痛みなど身体的な症状、いらいらや憂うつなどの精神的な症状が現れ、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。原因ははっきりとは分かっていません。一説には生理周期半ばあたりの排卵期を過ぎる2つの女性ホルモンの分泌量が急激に変化し、脳の中枢(視床下部)がそれに対応しきれなくなることで、PMSの様々な不調が起こるのではないかと考えられています。視床下部は自律神経の中枢でもあるため、視床下部が対応しきれなくなると自律神経が乱れ、血流が悪くなって頭痛や肩こりが起きたり、腸の働きが乱れて便秘や下痢をもたらします。視床下部は食欲や五感にも関わっていることから、食欲が異常に増したり、においに敏感になったりします。感情を司る中枢とも隣り合っているため、イライラや憂うつ、無気力、不安などの精神症状にも現れます。また、排卵後の黄体期に分泌される女性ホルモンには水分をため込む働きがあるため、むくみが生じたり、倦怠感を覚えたりすることもあります。症状の現れ方や程度にはかなり個人差がありますが、複数の症状が重なって現れるケースがほとんどです。
月経前気分障害(PMDD)とは、月経1~2週間前から、強い気分の落ち込み・意欲の低下・イライラや怒りっぽくなる・情緒不安定・集中力の低下・理由のない不安感や緊張感・睡眠過多や不眠・流涙などの精神的症状が「日常生活に支障をきたすレベル」で出現し、月経が来ると良くなる状態を指します。
食生活の改善、十分な睡眠、有酸素運動、マッサージやリラクゼーションなどのセルフケアだけで十分な効果が得られない場合や、症状がつらく早く改善したい場合は、お薬による治療や、心理士によるカウンセリングが必要になります。
当院での治療は、漢方薬や、抗不安薬と頓服薬(一時的に重くなった症状を抑える薬)を併用しての治療です。
また、重い症状が続く患者様には、婦人科での治療(ピルなどの避妊薬を使用した治療)をお勧めしています。
漢方医学では人体も自然の一部であり、自然のサイクルから外れると人体に異常が出てくると考えられています。人間の身体は「気・血・水」の3要素で構成されていて、どれか一つでもバランスが崩れると不調が出てくるのです。
PMDDは低用量や超低用量ピルによる治療が有効な場合が多いのですが、症状の程度や年齢に応じて、漢方を使ったり、抗うつ剤や安定を用います。
PMDDと思われる症状や、またPMSの精神的症状の治療に効果的と言われているのがSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ剤の一種です。シナプスにおけるセロトニンの再吸収に作用することで抑うつ症状を改善する薬で、黄体ホルモンや卵胞ホルモンなどの作用によって低下していると考えられるセロトニンをおぎなう作用があります。副作用として気分が悪くなり吐き気がするなどの症状が現れることもありますが、1~4週の服用継続で消失することが多いため、服用する場合は一定期間試してみる必要があります。
PMDDでも、比較的症状が軽ければ漢方治療も選択肢の一つですが、SSRIを用いた治療が推奨されています。